通知弁護士とは

弁護士法は

第三条 弁護士は・・訴訟事件、非訟事件及び審査請求・・に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

と定めます。弁護士は法律一般の解釈・適用を扱う職務であり(1項)、税理士は所得税法・法人税法等の解釈・適用を扱う職務ですが、法律一般を全体集合とすると、所得税法・法人税法等はその部分集合であるので、上記2項は、全体集合を扱う資格がある者は、部分集合を扱うことも当然(=別途、税理士資格を取得しなくても)できるとしています。

*税理士さんの中には「“当然”と言われると下に見られたように感じる」という方がおられるようですが、法令用語の“当然”は「手続きを特別にしなくても」という程度の意味です。

ただ、税理士は国税局長の監督に服し脱税相談等を受ければ懲戒の対象となるのに対し、上記弁護士法の規定だけでは弁護士に対しては国税局長による監督が及びません。そこで税理士法は、上記弁護士法の存在を前提に、その特別法として(*)下記規定を設けました。

第五十一条 弁護士は、所属弁護士会を経て、国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、随時、税理士業務を行うことができる。
2 前項の規定により税理士業務を行う弁護士は、税理士業務を行う範囲において・・第三十三条から第三十八条まで(脱税相談等の禁止等)・・の規定の適用については、税理士とみなす。・・

*両規定の関係については平成24年3月8日大阪高裁判決参照。

これにより

第四十五条 財務大臣は、税理士が・・第三十六条の規定(=脱税相談等の禁止)に違反する行為をしたときは、二年以内の税理士業務の停止・・・の処分をすることができる。

等の規定が「税理士とみなされる弁護士」にも適用されます。*税理士業務の禁止の処分に関する部分を除きます(51条2項)。税理士業務の禁止の処分は、当該処分を受けた者について、税理士法4条第6号により処分を受けた日から3年を経過する日まで税理士となる資格を失わせ、その結果、26条1項第4号により、日本税理士会連合会をして上記の者の税理士登録を抹消せしめる処分ですが、通知弁護士はそもそも日本税理士会連合会に登録せず(税理士になるわけではなく)弁護士の資格だけで税理士業務をおこなうものだからです。

ところで税理士業務とは、納税者が(A)納税申告したり(B)税務署等に対し主張を述べたりする時に納税者を代理すること(税理士法2条1項1号)、(C)申告書等を作成すること(同項2号)、(D)上記ABCに関する計算について相談に応じること(同項3号)であるとされています。の税務相談は、ABCの計算に関するもの=具体的な申告案件を前提とする計算に関するものであるので、仮定の事例に基づく計算や、一般的な税法の解説は含まれません(日本税理士連合会,2019,新税理士法(5訂版)P76)。

弁護士が申告書作成や申告代理をすることは少ないと思いますが、例えば遺産分割や不動産売買の事件に関しては税金の具体的計算をしなければ最適解が見つからない場合もありますし(上記D)、事件処理の流れの中で税務署の担当者と意見交換せざるを得なくなる場合もあります(上記B)。そういう事態に備えて、少なからぬ弁護士は、税理士法51条に基づく国税局への通知をしています。

なお「“随時”、税理士業務をおこなうことができる」の“随時”とは、上記のように弁護士業務に関連して税理士業務を行うことを意味していて、税理士業務を本業にする場合は、税理士登録をすることが必要とされているようです(上記大阪高裁判決参照)。