守秘義務について

弁護士は法律により守秘義務を負っています。

弁護士法は

(秘密保持の権利及び義務)
第二十三条 弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

と定めます。保護されるのは職務上知り得た秘密ですが、

(弁護士の職務
第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼・・によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求・・その他一般の法律事務を行うことを職務とする。

とされており、訴訟事件、非訟事件及び審査請求等の依頼をされた場合はもちろん、1回限りのご相談も“その他一般の法律事務”に含まれるので、ご相談を通じて知った秘密は“職務上知り得た秘密”として保護されます。
職務との関係では、弁護士が例えばPTA会長や町内会長をしている場合、会長としての仕事を通じAさんが給食費を払わないことやBさんが町会費を滞納していることを知ってそれをSNSで公開したりすれば、一般市民として名誉毀損等の責任を負う可能性は当然あるものの、弁護士法上の守秘義務違反は問題になりません。PTA会長や町内会長は(たとえ弁護士の肩書きを信頼されて会長に推されたものであったとしても)弁護士法所定の弁護士の職務ではないからです(平成19年2月28日大阪高裁判決参照)。
なお上記23条は
秘密を保持する権利を有し、義務を負う
とします。秘密保持というのは聞き慣れないかもしれませんが、例えば、弁護士がある相談者からサイドビジネスの法律相談を受け、その後,その相談者を管轄する税務署員が「彼がどのくらい儲けているか教えて欲しい」と訪ねてきたとしても(*現実にはそのような来訪はないと思います)、弁護士は、相談者に対し守秘義務があると同時に、税務署員に対しては秘密を保持する権利があるので、「どうぞお帰り下さい」と質問をはねつけることができます。
また上記23条は“弁護士であった者”にも守秘義務を課すので、職務上知り得た秘密は引退後も墓場まで持って行かねばなりません。
秘密とは、世間一般に知られていない事実で、本人が特に秘匿しておきたいと考える性質の事項(主観的意味の秘密)のほか、一般人の立場から見て秘匿しておきたいと考える性質の事項(客観的意味の秘密)を意味します(上記大阪高裁判決)。そのような見地からは、相談の具体的内容はもちろん、民事、刑事又は行政上のトラブルを抱えて弁護士に相談したということ自体も、格別の事情がない限り通常は秘匿しておきたい事項と思われますので、「Cさんは貴方に相談したと言っているが本当か?」という類の質問にも、本人の同意がない限り原則としてお答えすることはできません。ただ、上記裁判例が言うように、秘密=世間一般に知られていない事実、であるため、例えば本人がブログ、SNS、手記等で公開した事実は、それが不名誉な事実であったとしても秘密に当たらないことが多いと思います。

なお、形式的には秘密を漏らしたように見える場合でも、正当な理由がある場合は、守秘義務に違反するとはいえません(上記大阪高裁判決、平成17年10月14日大阪地裁判決等)。