レンタブル比
建築物の収益性に関する指標の1つに、レンタブル比があります。
これは、一般的には(例えば賃貸用物件であれば)計画建築物の
(賃貸予定面積)÷(延べ面積)
で算出される値(単位:%)とされます。賃貸予定面積は、賃借人が排他的に占有する自室の面積(契約面積)の合計で、建築物の延べ面積から、玄関ホール、駐車場、自転車置き場、ゴミ集積場、共用階段、共用廊下、エレベーターシャフト、パイプスペース等々の共用部分面積を控除したものとなります。
建築主は、総建築費用を
(延べ面積)×(レンタブル比)×(単位面積当たりの想定月額賃料)
で毎月回収することになります。ゆったりとした玄関ホール、余裕のある駐車場、大きなエレベーター、広い共用廊下・・といった高級感のある設計をすれば、レンタブル比は低下し、そのため単位面積当たりの想定月額賃料を高めに設定しなければなりません。反対に効率優先の設計をすればレンタブル比は高くなりますが、マンションであれば80%程度がその上限とも言われます。
ところで、レンタブル比は”比較の尺度”なので、その意義が同じであることが重要です。これに関し、かつて、不動産鑑定士によるレンタブル比95%のマンションを想定した収益分析を見たことがあります。その値では屋内駐車場もエレベーターも共用廊下も設置できないだろうと思い、その鑑定士にお話を伺うと、延べ面積の代わりに容積率対象床面積を分母とした、とのことでした。
建築確認における建築物の容積率算定にあたっては、延べ床面積から一定部分の面積を控除し、残りの面積を容積率対象床面積とします。一定部分の面積とは、例えば、駐車場、駐輪場、備蓄倉庫、貯水槽(建築基準法施行令2条1項4号)、エレベーターシャフト、共同住宅の共用廊下・階段(建築基準法52条6項)等です。また土地の効率的利用の見地から、半地下の住居部分(天井が地盤面の高さから1m以下にあるもの)も、延べ床面積から控除されることがあります(同法52条3項)。しかし上記のように計算上控除した部分にも建設費はかかるものである以上、少なくとも建設費の効率的回収の尺度としてこれを示すのであれば、算定の分母から上記部分を控除することは不適切であると思います。
*例えば、(A)総2階+半地下(天井高が地盤面から1mの住居)付きの建物と、(B)総2階+半地下(天井高が地盤面から1.01mの住居)付きの建物とをそれぞれ一棟貸しする場合についてレンタブル比を算定すると、延べ面積を分母とすればABとも約100%であるのに対し、容積率対象面積を分母にするとAは約150%でBは約100%となるものの、半地下部分の地盤面からの天井高が1cm違うだけ(イメージとしては「半地下部分のうち地上に見えている所が1cm高いだけ」)でそれほど収益性(建設費の回収効率)に差があるとは考えられないので、結局、後者の算定方法は不合理であることがわかります。