マンション真っ二つ
2016年の熊本地震では、一部マスコミにより「マンション真っ二つ」と報じられた建物がありました。
一般に、形状の異なる(=振動特性の異なる)複数部分からなる建物を「一敷地一建物の原則」(建築基準法施行令1条)により1棟の建物とする場合、各部分をエキスパンションジョイント(電車の連結器のように、相互に行き来はできるが固定しない装置)で橋渡しすることがあります。
(用語の定義)
第一条 この政令において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 敷地 一の建築物・・のある一団の土地をいう。
*要するに、敷地は複数の筆に分かれた一団の土地でも良いが、敷地上の建物は1つでなければならない、という規制です。
上記のような建物が地震に遭遇した場合、例えばA部分が南に揺れようとする時にB部分は北に揺れようとすることがあります。その際もし両部分が固定されていれば全体が損壊する場合がありますが、上記装置で橋渡しされているだけであれば、各部分が好き勝手な方向に揺れてやがて収まるので、建物全体の損壊を防ぐことができます。上記報道後には「これはエキスパンションジョイントが正常に作動したものである」とのコメントがネット上で多くなされましたが、おそらく第一報は、専門知識のない記者による勘違い報道であったと思います。
ところで、このような勘違いは、建築トラブルでしばしば経験します。鉄筋コンクリートの乾燥収縮によるヒビ割れもその例です。もしそこで施工会社側の弁護士が関係者からの説明そのままに「問題ない」と繰り返すばかりであると、かえって先方の不信感を増大させる場合がありますので、当事務所では、そのような事案では「そもそもなぜコンクリートは固まるのか」からご説明申し上げることもあります。