直近合意時点 土地価格低下局面での地代増額請求
「ここ数年の土地価格は低下傾向にあるにもかかわらず、地代増額を請求される」という場面があります。
借地借家法は
(地代等増減請求権)
第十一条 地代・・・が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。・・・
と定めます。これに関し最高裁平成26年9月25日第一小法廷判決は
賃料増減額確認請求訴訟においては、その前提である賃料増減請求の当否及び相当賃料額について審理判断がされることとなり、これらを審理判断するに当たっては、賃貸借契約の当事者が現実に合意した賃料のうち直近のもの(直近の賃料の変動が賃料増減請求による場合にはそれによる賃料)を基にして、その合意等がされた日から当該賃料増減額確認請求訴訟に係る賃料増減請求の日までの間の経済事情の変動等を総合的に考慮すべきものである(最高裁平成18年(受)第192号同20年2月29日第二小法廷判決・裁判集民事227号383頁参照)。
と判示しました。この“賃貸借契約の当事者が現実に賃料を合意した日のうち直近のもの”を直近合意時点と言いますが、上記判例によれば、前記条文は下記赤文字を挿入して理解すべきものということになります。
第十一条 地代・・・が、土地に対する租税その他の公課の(直近合意時点以来の)増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の(直近合意時点以来の)経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったとき(*)は、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。・・・
*「不相当であるとき」ではなく「不相当となったとき」すなわち時間的変化を想定した文言ですので、これも直近合意時点以来の変化を指すものと思われます。
国土交通省の不動産鑑定評価基準も、上記判例が引用した平成20年最高裁判決後の改訂で、同様の理を示しています(平成26年5月改正版P32)。
これにより、例えば、10年前に地代を合意しそのままになっていたが、その後8年ほどで土地価格は1.5倍になり、その後の2年間は調整局面に入り土地価格が低下し、結局10年前と比較すると土地価格は1.4倍となった・・という時点で地代増額を請求された場合、最近の土地価格は低下局面にあったとしても地代増額が認められる可能性が十分にあります。