開発法による不動産鑑定
更地の鑑定評価額は、取引事例に基づく比準価格と、土地の収益性から逆算した価格(土地残余法による収益価格)とを関連づけて決定するものとされていますが、開発法と呼ばれる手法を併用することもできるとされています。開発法においては
(1)例えば細分化された土地を地上げして大規模マンションを建設・分譲することが合理的と認められるときは、最有効使用のマンションが建築されることを想定し、販売総額から建物建築費+付帯費用を控除した価格をもって、試算価格とします(厳密には、土地仕入れ時と請負代金支払時とマンション販売時とでは時期がずれるので、一定の利率を想定して時点補正をおこないます)。また逆に
(2)例えば広い土地を区画割りして宅地として分譲することが合理的と認められるときは、販売総額から造成費等を控除した価格をもって、試算価格とします。
その上で、開発法による価格、上記比準価格及び収益価格を比較考量します。(国土交通省 不動産鑑定評価基準 平成26年版 P43 第1章 価格に関する鑑定評価 第1節 土地 Ⅰ 宅地)
開発法は、デベロッパーの土地仕入れ担当者がいつも頭の中でやっていることだと思います。デベロッパーがマンション用地を仕入れる場合、当該地域の公示価格や路線価はとりあえず措いて、まず「ここにマンションを建てたら総額何億円で売れるか、そのマンションは何億円で建設できるか、そこから逆算すれば土地に何億円まで出せるか」という思考により土地買収価格を試算するからです。
ただ、開発法では、例えばどの程度のグレードのマンションを建てるか(そもそもその地域はマンションに適するか)、それが坪当たりいくらで売れるか、建設会社はその建設をいくらで請負ってくれるか・・といった前提となる基本情報はきわめて幅広いため、不動産鑑定士がやろうと思えば恣意的な結論を導くことも可能です(これに関する鑑定士の懲戒事例も見受けられます)。従って、もし訴訟において開発法に基づく意見書が提出されたなら、その内容は“突っ込みどころ満載”である可能性があるので、その正否を慎重に検証する必要があります。ことに、不動産鑑定評価基準に違背して比準価格及び収益価格との比較考量をおこなわず、開発法のみに基づいて結論を導いた意見書は、相当に怪しいと思って間違いないと思います。