増改築承諾料の相場

裁判所による増改築の許可

多くの借地契約では、借地上の建物を増改築するには、地主の承諾を要するものとされています。そのような契約による借地の借地人が、土地の通常の利用上相当とすべき増改築を計画したにもかかわらず、地主がこれを承諾しないときは、裁判所が、地主の承諾に代わる増改築の許可を与えることができます。

借地借家法17条
2 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

土地の通常の利用上相当とすべき増改築

上記許可の前提として、“土地の通常の利用上相当とすべき増改築”であることが必要です。相当とされる事例としては各種のものを想定することができますが、例えば、今の古い木造2階建は来たるべき震災に耐えられず居住者の生命が危険にさらされるから最新の耐震基準に準拠した木造2階建てに建替えたい、というような場合もその1つです。土地の通常の利用上相当とすべきでない増改築としては、建築基準法、消防法その他の建築基準関係規定に違反する増改築を想定することができます。
これに関し、裁判所に対する上記許可を求める申立てにあたっては(裁判所により異なりますが)一般的には、計画建物の種類・構造・床面積・用途等を記載した増改築目録、配置図、平面図、立面図等の提出を求められると思います。そして

借地借家法17条
6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項から第三項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

とされており、多くの場合、上記鑑定委員会の委員3名のうち1名に建築士が選任され、増改築目録から建坪率・容積率等について、配置図から接道状況等について、平面図から敷地境界線からの後退距離等について、立面図から各種斜線制限等について、簡単なチェックをすることになると思います。

付随処分(増改築承諾料等)

ところで、増改築の許可にあたっては

借地借家法17条
3 裁判所は、前二項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

とされています。“他の借地条件を変更”とは地代改定等であり、“財産上の給付”とはいわゆる建替承諾料です。東京地裁における承諾料の相場は、たとえば木造→木造の増改築の場合(木造→RC造のような増改築は、借地契約の用途変更の承諾料が加算される場合として、別項にて説明します)更地価格の3%がベースで、計画建物の利用効率が従来の建物よりも明らかに増大する場合(例:木造自宅を改築して木造アパート事業を開始する場合等)には、利用効率増大の程度に応じ5%までの範囲で増額するものとされています。なお、全面改築ではなく増築や一部改築である場合は、更地価格の3%までの範囲で、既存床面積v.s増築床面積の割合等を考慮して算定されます。