調査会社(インスペクター)も調停委員もいろいろ
建物の不具合調査業者(インスペクター)の報告書が証拠として建物所有者から提示されることがありますが、同調査業は無資格でできることもあってか、問題事例に遭遇することもあります。
例えば、赤外線映像(サーモグラフィ)で雨漏りを診断する技法があります。散水で降雨を再現し、散水停止後、建物壁面をサーモグラフィで撮影し、際立って低温の箇所があれば同壁面裏に水が流れたことが示唆されている・・とするものです(この技法によっても、雨漏りの原因箇所は不明で、ましてそこから水が入ることが法的に請負人の責任によるものか、メンテナンスを怠ったことによる経年劣化等によるものかは別問題ですが、その点はとりあえず措きます)。
某調査会社が、上記技法によると称し、雨漏りを疑った外壁面の1箇所にホースで水を当てて外壁面に細く滝状に流し、放水停止後にサーモグラフィで撮影したら、滝状に水が流れた箇所が青く撮影され温度低下が示されました。ホースで滝状に打ち水をしたのだから、そこの温度が下がるのは当然です。ところが上記調査会社は「これは壁面内で雨漏りが発生している証拠である」との報告書を作成して建物所有者に提出し、これが簡易裁判所の調停に証拠として提出されました。
この事件では、調停委員2名がいずれも専門外の方(建築に詳しいと自認しているが、ご本人のお話等によれば実は理系学部の出身ではない方)であったこともあってか、上記報告を鵜呑みに調停を進めようとされたので、その幼稚な思い込みを正すのに大変苦労しました(最終的に請負人には一切の負担なく事件を終了させることができました)。
最近では、サーモグラフィー等の専門的機材は誰でもAmazon等で入手できるので、同画像それ自体に大した価値はありません。しかしそのデータを自分の頭でどう解釈するかの場面で、関係者の真価が問われます。調査会社も調停委員も弁護士も、そういう場面でこそ力を発揮しなければならないと思います。