賃貸借の個人保証には極度額設定を

民法改正により、2020年4月以降、賃貸借契約に個人の保証人を求める場合、極度額の定め(例:「保証人の一切の責任は賃料の24か月分を限度とする」のような条項)がないと、保証が効力を生じないこととなりました。

民法第四百六十五条の二
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約・・であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は・・・極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

賃貸借に限らず、不特定の債務(延滞賃料、遅延損害金、建物損壊の賠償金等、将来どのような名目でいくら請求されるかわからない債務)の保証(根保証)をすると、後で思わぬ高額の請求を受けることがあります。上記は、これを防ぐための改正です。

しかし中小規模の賃貸業者の方の中には、極度額の記入欄のない古い契約書をまだ使われている方も少なくないようです。その場合、賃借人が賃料を延滞したりトラブルを起こしたりすることなく円満に退去すれば問題は顕在化せずに終わりますが、賃借人が賃料を延滞するなどしたため保証人に履行を求めるような場面では、保証契約の無効が問題になります。

なお、上記より前に締結した保証契約は、極度額の定めがなくても“なお従前の例による”、すなわち2020年4月以降も前と同じように有効とされます。

附則(平成二九年六月二日法律第四四号)
(保証債務に関する経過措置)
第二十一条 施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による。