雨「漏り」と、ガス「漏れ」
建物のトラブルの中には、雨漏りやガス漏れがありますが、雨は「漏り」でガスは「漏れ」とされます。広辞苑(第4版)の見出し語に「雨漏り」はありますが「雨漏れ」はなく、Googleで「雨漏れ」を検索すると「ひょっとして 雨漏り?」とサジェストされます。これは、雨漏りは古語に由来し、ガス漏れは現代語であることによるものだと思います。古語で自動詞「漏る」(四段活用又は下二段活用)の四段活用の連用形は「漏り(例:雨の漏りくる 音そ悲しき(和泉式部))」ですが、動詞は連用形が名詞化するので、この「漏り」が名詞化して「雨漏り」になり、それが現代まで引き継がれているのだと思います。ところが平安時代にガス漏れはなく、それを言い表す言葉は自ずと現代語となりますが、現代語「ガスが漏れる」(下一段活用)の連用形は「漏れ」であるため、これが名詞化して「ガス漏れ」になり、雨漏りとの語尾の差が生じたのだと思います。なお、現代語では「ガスが漏る」(五段活用)とは言わないので、五段活用連用形の「ガス漏り」にはなりません。
但しネットで「雨漏れ」を検索すると無数のページがヒットするので、「雨漏れ」も現代語の連用形「漏れ」に由来する名詞として普通に通用しているものと見ることができ、これを一概に誤りであると決め付けることは適切でないように思います。