法令における「その他」と「その他の」

法令において「その他」は、その直前の名詞がその後に続く名詞に含まれない並列関係にあることを意味し、「その他の」は、その直前の名詞がその後に続く名詞に含まれる包含関係を意味する、という説明がなされることがあります。例えば「その他政令で定める」又は「その他の政令で定める」という場面では、そのような書き分けがなされます。

地方自治法233条
5 普通地方公共団体の長は・・・主要な施策の成果を説明する書類その他政令で定める書類を併せて提出しなければならない。

同施行令166条
2 地方自治法第二百三十三条第一項・・・第五項に規定する政令で定める書類は、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書とする。

主要な施策の成果を説明する書類は、政令で定める書類に含まれていません。主要な施策の成果を説明する書類は、政令所定の歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書と並列して提出しなければなりません。

地方自治法238条の5 
3 普通財産のうち国債その他の政令で定める有価証券・・・は、・・・信託することができる。

同施行令169条の6
2 地方自治法第二百三十八条の五第三項に規定する政令で定める有価証券は、国債、地方債及び・・・社債とする。

国債は、政令で定める有価証券に含まれています。

しかし注意すべきは、この“ルール”には例外が多いということです。

民法9条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

「日用品の購入」が「日常生活に関する行為」というもっと広い概念の一例であることは明らかですが、この場合、前者は後者に包含されるにもかかわらず「その他の」とはされていません。

刑法7条 2 この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。

「官公庁」が「公務員が職務を行う所」の一例であることは明らかですが、この場合、前者は後者に包含されるにもかかわらず「その他の」とはされていません。

一般的に、後半の名詞(上記の民法や刑法の例では「行為」や「所」)の前に説明が置かれる(“日常生活に関する” 行為、“公務員が職務を行う” 所)場合には、前半の名詞が後半の名詞に包含される関係にあっても「その他の」としない傾向にあるようです。おそらく「官公庁その他の公務員が職務を行う・・」等の表現では「官公庁は公務員の一種である」というおかしな包含関係がイメージされかねないからだと思います。

このように「その他」と「その他の」との使い分けは厳格なものではなく、上記の民法や刑法の例のように場面に応じて両者が柔軟に使い分けられています。もし「その他」は並列関係であって包含関係ではあり得ないと思いながら上記の民法や刑法の条文を読んだら頭の中が混乱してしまうと思いますが、前後の言葉の関係はそのような形式で一律に決まるものではなく条文全体のロジックにより判断すべき問題であると考えれば、混乱せずに済みます。

なお、一般の契約書を作成する場面では、このような特殊な使い分けをまねする必要はなく、例えば並列関係は「埼玉工場、千葉工場、及びその他の生産設備」のように、包含関係は「埼玉工場、千葉工場を始めとする一切の生産設備」のように書いた方がわかりやすいと思います。