賃料増減額確認請求訴訟の訴額
賃料増減額確認請求訴訟の訴額は
月額賃料の差額 ×(増減額の意思表示から訴提起までの月数 + 12か月)
とする裁判所が多いようです。
これは
賃料増減額確認請求訴訟の訴訟物は口頭弁論終結時までの賃料額である
という1つの裁判例(大阪高裁昭和49年12月16日)を前提に、かつ
統計資料にもとづき民事事件の一審の平均審理期間を12か月と仮定して
訴訟物の価額を算出するという考え方です(訴額算定に関する書記官事務の研究(補訂版) 令和元年8月 法曹会 P40~)。
ただ、賃料増減額請求権は形成権であり、それを一度行使すれば次の増減額請求まで賃料は同額で推移するのですが、賃料増減額確認請求訴訟は、原則として、上記形成権行使の時点におけるピンポイントでの賃料を確認する訴訟である(下記最高裁判例)と考えるなら、形成権行使時から口頭弁論終結時までという一定の幅をもった期間の賃料が“訴訟物=審理の対象”になると考えることは、一般的にはできません。
賃料増減額確認請求訴訟の確定判決の既判力は、原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り、前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について生ずると解するのが相当である(最高裁平成26年9月25日)。
とはいえ、口頭弁論終結時までに再度の増減額請求がなされることは希であり、賃料増減額確認請求訴訟には増減額請求時から口頭弁論終結時までの賃料を事実上確定する機能があるため、上記算式がなお維持されているのだと思います。
ちなみに、上記算式に加えて、目的不動産の価額の2分の1の額(=賃借権自体の価額)の方が低額であるときはその額によるとされています。しかし経済合理性から言えば、そのような価格関係にある場合には、当該物件を賃借したりせず数年分の賃料相当額で近隣の類似物件を購入することも多いと思われるので、上記例外の適用例は希ではないかと思います。
また、調停申立てに際しての調停事項の価額の算出に関しては、別の考え方をする場合もあるようです。いずれにせよ法律で決まっている問題ではなく各裁判所の取り扱いの問題であるので、訴え提起又は調停申立てに際して管轄裁判所に確認する必要があります。