専門家による調停のバックアップ
簡易裁判所の民事調停では、弁護士を依頼せず御自身で調停に出席して対応される場合もあると思いますが、そのような場合も、少なくとも専門家によるバックアップを受けることが望ましい、という実例のご紹介です。
ある借地人の方が、月額約15万5千円の地代を割高であると考え、地代減額の調停を簡易裁判所に申し立てたところ、不動産鑑定士である調停委員から「月額約11万8千円が妥当である」との見解が示されました。調停委員(しかも不動産鑑定士)がそうおっしゃるのであれば、ともすればその額で妥協して調停を成立させてしまいがちですが、その借地人の方は、かねてより独自にお知り合いの不動産鑑定士の方にこの価格について相談してバックアップを受けており、上記和解案につき「依然として高すぎる」との意見を受けました。そこで借地人の方は、上記調停を不調(不成立)により終了させ、地裁での訴訟へと移行しました。同訴訟は当事務所の受任案件となり、地代の算定につき詳細に理論的な主張をするなどしましたが、その結果、月額約15万5000円の地代を向こう7年間は月額約4万3000円、それ以降は月額8万5000円とする内容での和解が成立しました。もちろん、地代や家賃の増減額はさまざまな前提条件の組み合わせで決まるものであり、一般論としてこのような成果が得られるというものではない、ということは強調しておきたいと思いますが、他面において、15万5千円の地代を当面4万3千円にできる前提条件が揃っているにもかかわらずそれを11万8千円で妥協してしまう場合も、案外多いのではないかと想像します。