平均の平均は平均ではない

不動産鑑定に関し、間違った統計的処理が気になる場合があります。

統計の教育では「平均(算術平均又は相加平均。以下同じです。)の平均は平均ではない」と教えられます。例えば、ある高校の理系コース200名の数学Ⅰの平均点が90点、文系コース20名の同平均点が50点であった場合、その高校全体の数学Ⅰの平均点は、90+50を2で割って70点・・ではありません。(90点×理系コース200人+50点×文系コース20人)÷(生徒総数220人)=約86点です。

しかし、訴訟でも良く引用される有名な不動産鑑定の資料集は、地代の公租公課倍率(=地代÷公租公課。一般的には3倍前後とも言われます。)に関し、都内の各特別区ごとの平均を算出し、その23個の平均値を合計して23で割ったものを都内23区の平均であるとしています(厳密には、データの得られなかった区があるため、23個未満の平均値の合計値を当該平均値の個数で割った結果を東京23区の平均であるとしています)。これは上記設例で言えば高校全体の平均は90+50を2で割って70点とするようなもので、間違いです(同資料集記載の元データに基づいて検算すると、正しい平均値との間に相応に差があることがわかります)。

このようなデータ資料集に遭遇した時は、それを漫然と利用するか、それとも「何かおかしい」と感じて検証しその採否を判断するかにより、それぞれの専門家としての価値が問われるように思います。